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最低限理解しておきたい、民泊規制緩和の現状まとめ(後編)

こんにちは民泊専門ライターのTakashiです。

前編に引き続き、民泊規制緩和についての記事となります。

前回は、特区型民泊に関して大田区の思惑通りに普及が進んでいない要因や、今後の緩和へ向けた動きについて整理しました。今回は、特区型民泊が進まない要因の一つとしても触れた、旅館業法の政令改正(簡易宿泊所型民泊)について詳しく解説していきたいと思います。

2月29日に開かれた「民泊サービス」のあり方に関する検討会において、改めて厚生労働省より「旅館業法」を4月1日から一部緩和する方針が示されました。こうした政府内での動きを受けて、旅館業法の政令改正についてはどのように報道されているのでしょうか。

厚労省は9日から一般の意見公募を開始。この結果も踏まえて旅館業法の施行令を改正し、4月1日から施行する予定としている。これまで違法状態で営業していたマンションの空き部屋など小規模施設も自治体から許可を取得しやすくなり、民泊は今春から全国で事実上の「解禁」となる見通し。

出典:産経ニュース(2016年2月9日)

政府は今回の案に従って旅館業法の政令を改正し、今年4月1日から施行する方針で、事実上の「民泊解禁」となる。

出典:日テレNEWS24(2016年2月29日)

ご覧の通り「民泊解禁」を強調する報じ方が目立つようです。字面だけで見ると、4月1日以降は自由に民泊ができるように感じてしまいますが、「民泊解禁」というのは具体的にどういった規制が緩和されることを意味するのでしょうか。

それでは、「民泊サービス」のあり方に関する検討会の資料を用いて、4月1日の時点で実際に何が緩和され、何が緩和され「ない」のかを読み解いていきたいと思います。

▼目次

「民泊サービス」のあり方に関する検討会とは?

旅館業法の政令改正(簡易宿所型民泊)

今後の展望

「民泊サービス」のあり方に関する検討会とは?

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昨年より、国交省と厚労省を中心に民泊解禁へ向けて議論を進めている有識者会議のことを言います。解禁へ向けて、安全の確保、近隣住民とのトラブル防止、旅館やホテルとの公平な競争環境の確保といった課題について、民泊に関わるルール整備のための議論が進められています。

過去6回にわたる検討会の中では、政府関係者や有識者だけでなく、とまれる社の親会社である百戦錬磨やマンションの管理組合法人など、実際に民泊と関わる関係者も招かれており、民泊の実態についてより深い議論がなされることが期待されています。

旅館業法の政令改正(簡易宿所型民泊)

これまで「民泊サービス」のあり方に関する検討会においては、旅館業法の中の「簡易宿所」の営業許可の基準にもとづいて、客室の面積の条件や、受付業務を行うフロント(玄関帳場)の機能といった構造基準について主に議論されてきました。要するに、「ホテル」、「旅館」、「簡易宿所」、「下宿営業」という4つの営業種別のうち、「簡易宿所」の構造基準を一部変更して、民泊にも当てはめてしまおうという考え方です。

なぜ旅館業法自体に変えないのか?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、旅館業法自体を変更しようとする場合、国会での審議が必要なため、対応に時間がかかってしまいます。一方、閣議決定のみで制定可能な政令であれば、比較的短時間で対応することができます。民泊の規制緩和に対する要望が高まる中で、それだけ国は対応を急ぎたいということでしょう。

旅館業法はどのように変わるのか?

第6回 「民泊サービス」のあり方に関する検討会の配布資料を見てみると、旅館業法の政令改正については、早急に取り組むべき課題として下記のように記載されています。

政令改正方針案

○ 旅館業法施行令(昭和32年政令第152号)第1条第3項第1号において規定されている簡易宿所営業の客室の延床面積について、現行の33平方メートル以上を求める規定から、33平方メートル(収容定員が10人未満の場合には3.3平方メートルに収容定員の数を乗じて得た面積)平方メートル以上を求める規定に改正する。(平成28年4月1日施行予定)
○ 平成28年2月9日(火)から平成28年3月9日(水)まで、上記の案にてパブリックコメントを実施している。

現行 改正案
(構造設備の基準)
第一条 (略)
2 (略)
3 法第三条第二項の規定による簡易宿所営業の施設の構造設備の基準は、次のとおりとする。
一 客室の延床面積は、三十三平方メートル以上であること。
二~七 (略)
4 (略)
(構造設備の基準)
第一条 (略)
2 (略)
3 法第三条第二項の規定による簡易宿所営業の施設の構造設備の基準は、次のとおりとする。
一 客室の延床面積は、三十三平方メートル(収容定員が十人未満の場合には三・三平方メートルに収容定員の数を乗じて得た面積)以上であること。
二~七 (略)
4 (略)

通知改正方針案

○ 「旅館業における衛生等管理要領」中、簡易宿所の玄関帳場等に関する基準を下記のとおり改正する。(平成28年4月1日施行予定)

現行 改正案
適当な規模の玄関、玄関帳場又はフロント及びこれに類する設備を設けること。その他「第1 ホテル営業及び旅館営業の施設設備の基
準」の11(玄関帳場又はフロント)に準じて設けること。
適当な規模の玄関、玄関帳場又はフロント及びこれに類する設備を設けることが望ましいこと。その他「第1 ホテル営業及び旅館営業の
施設設備の基準」の11(玄関帳場又はフロント)に準じて設けることが望ましいこと。ただし、収容定員が10人未満の施設であって、次の各号に掲げる要件を満たしているときは、これらの設備を設けることは要しないこと
(1)玄関帳場等に代替する機能を有する設備を設けることその他善良の風俗の保持を図るための措置が講じられていること。
(2)事故が発生したときその他の緊急時における迅速な対応のための体制が整備されていること。

出典:第6回 「民泊サービス」のあり方に関する検討会 資料3「早急に取り組むべき課題への対応状況について」

まとめると、
・宿泊客が10人未満であれば、1人当たり「3.3平方メートル」の広さでよい
・緊急時対応の体制などを整えれば、受付業務を行うフロントを設けなくてよいとしている。
ということになります。上記のルールが改正されれば、Airbnbなど既存の民泊プラットフォームにも掲載されているようなワンルームマンションも合法的に宿泊施設として営業可能と言われています。

また、わざわざ「平成28年4月1日施行予定」と具体的な日時を明記をしていることを考えると、4月1日に旅館業法の上記条件が緩和される可能性は濃厚だと言えます。よく「民泊解禁」のニュースで目にするのは、上記2点の旅館業法に関する規制緩和を指しています。

旅館業法の以外の関連業法の規制に変化はあるのか?

一方で、旅館を運営する際には、これまで議論の中心となってきた旅館業法以外に、建築基準法や消防法といった他の法規制にも準じる必要があります。こうした旅館業法以外の業法についての報道ではあまり言及されていないように見受けられます。

では、「民泊サービス」のあり方に関する検討会においては、どのように議論されているか資料をもとに見ていきましょう。

○建築基準法における用途地域規制との関係
・ホテル、旅館は住居専用地域では一切営業できないが、民泊についてはできるように緩和すると、良好な住環境を求めて住んでいる人に大きな影響を及ぼすことになり、慎重な検討が必要。

・ 周辺の住民とのトラブルを避けるために、用途地域の規制が緩和となった場合でも、住環境保持の観点から一定の線引きは必要。

出典:第6回 「民泊サービス」のあり方に関する検討会 資料2「今後の検討に当たっての基本的な視点と想定される主な論点(案)及び検討の方向性(案)について」より主な意見の一部を抜粋

建築基準法で定める「用途地域」の規制については、まだ明確な結論がでていないようです。「慎重な検討が必要」といった表現からもわかるように、「用途地域」の規制については中長期的に議論されていくことが前提とされているようです。つまり、4月1日に旅館業法同様、明確な結論が出される可能性は低いと考えられます。

では、「用途地域」の規制は民泊オーナーにどのような影響があるのでしょうか。そもそも、「用途地域」とは、都市計画法の地域地区のひとつで、用途の混在を防ぐため、住居、商業、工業など市街地における大まかな土地の利用目的を定めるものです。旅館業法との関連で言うと、定められたエリアでしかホテルや旅館を運営することはできない、ということです。この規制は特区民泊でも適用されており、東京都大田区が公開している民泊対象地域を具体例としてみてみましょう。

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出典:大田区における国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業(旅館業法の特例)の実施地域

大田区全体の約3分の2を占める黄色で示されたエリアが、民泊実施可能地域、つまりホテル・旅館の運営が可能な地域とされています。逆に言うと、4月1日の旅館業法の規制が緩和された後も、大田区においては残り3分の1のエリア(白塗りのエリア)にある物件は「用途地域」の規制に抵触するため、民泊を行うことはできないということです。

「全国で」解禁といった報道も目立ちますが、「用途地域」の規制があるかぎりは、日本全国全てのエリアで民泊が可能になるわけではありません。特に物件の購入・賃貸を検討されているオーナーの方は、注意が必要です。

○建築基準法、消防法における構造設備基準との関係
・既存の建築基準法と消防法による規制の中で火災安全は保たれるが、民泊を行っていることが把握できないと規制ができないので、把握して規制ができる体系を検討した上で、建築基準法と消防法との関係を検討すべき。

・中期的には民泊に係る新たな定義づけを行うべきではないか。その上で、用途規制や消防法など、関連制度に係る包括的、抜本的な制度設計を行うことが必要ではないか。その際、民泊を従来の宿泊施設とも、住宅とも異なるものとして位置付けることも必要ではないか。

出典:第6回 「民泊サービス」のあり方に関する検討会 資料2「今後の検討に当たっての基本的な視点と想定される主な論点(案)及び検討の方向性(案)について」より主な意見の一部を抜粋

消防法についても、具体的な結論は出されておらず、中長期的に議論していくべきとの考え方が示されています。そのため、特区型民泊の話でも少し触れましたが、消防署への確認といった煩雑な手続きは、4月1日の時点でも変わらず残ると思われます。

その他、民泊も「簡易宿所」の一つとして扱われる以上、営業許可を取得する際も、1-2ヶ月かかるといわれているホテル・旅館同様の許可手続きが必要となります。こうした手続きの簡略化については、資料をみる限りまだ議論されていないようです。

これまでの話をまとめると、これまでの議論を通じて4月1日に緩和されるのは、旅館業法の簡易宿所の構造基準の一部であり、その他の関連業法や手続きの緩和については、今後継続的に議論されていくべきものであるということがわかります。つまり、今回の規制緩和では、報道にあるような「解禁」という言葉から想起されるような状態までは、実質的に至らないのではないかということです。その意味で、4月1日の旅館業法の政令改正後の議論が、今後の民泊普及を考える上でより一層重要になってくるでしょう。

今後の展望

少し前の記事になりますが、旅館業法の規制緩和に関する長期的な展望については、国から次のような方針が出されています。

政府は22日、一般住宅に有料で旅行者らを泊める「民泊」を2段階で全国解禁する方針を固めた。まず今春に住宅をカプセルホテルなどと同じ「簡易宿所」と位置付け、自治体が営業を許可する仕組みを作る。第2段階で住宅地でのサービス禁止など制約の多い旅館業法の適用から民泊を除外する法整備を検討する。個人の住宅所有者も民泊を手掛けやすくする。

出典:日本経済新聞(2016年1月23日)

第2段階においては、Airbnbのようなプラットフォーム(仲介事業者)に登録制を義務付けるといった一定の規制をかける代わりに、旅館業法の適用をなくすという案が盛り込まれています。

4月1日の政令改正の時点では、安全の確保や近隣住民とのトラブル防止といった責任は、簡易宿所という名目で旅館業の営業許可を取得する民泊オーナーが負うことになります。しかし、オーナーが個人である場合は、そういった責任を全て負うのは限界があるでしょう(だからこそ、ホテルや旅館と同様の手続きを踏んで許可を取得させる枠組みになっているのだと推測されます)。そこで、個人では対応しきれない部分の責任をプラットフォームに追わせることで、個人の民泊オーナーへの敷居を下げて、民泊の普及を促そうというのが第2段階における規制緩和の基本的な考え方でしょう。

このように、実際に政府内で議論されている資料をもとに考察すると、報道で見るような「解禁」とは少しイメージの異なる規制緩和の実態が見えてきたのではないでしょうか。今後の民泊規制緩和の行方についても、今後レポートしていきたいと思います。なお、これまでの検討会の議事録や資料については、下記のページより確認することができます。気になる方は是非チェックしてみてください。

「民泊サービス」のあり方に関する検討会 |厚生労働省

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